家の売却の事前準備
この記事を読んでいる方で「あなたが家を売る理由を教えてください。」という質問には、ほとんどの方が答えられることでしょう。
しかし、「いつ頃までに」、「いくらで」、「譲れない条件は?」といった質問はどうでしょうか。 また、売却と同時に住み替えも検討している方で「売却後に住む新しい家の場所、建物タイプ、価格、間取り、周辺環境」などの質問に明確に答えられる方は意外と少ないのではないでしょうか。
売却理由も生活環境、経済状況、家族構成など人によって様々です。
頭の片隅ではぼんやりと考えながらも、理由や譲れない条件と優先順位まできちんと整理できている人はとても少ないのが実情です。
ではなぜ、売却理由や譲れない条件、売却後の住み替えイメージが大事なのでしょうか。売却活動は様々な理由で計画通りに進まないことが多々あります。
そして計画通りに進まない時でも、売却理由や譲れない条件を明確にしておくことで、そのような計画外の事態でも慌てることなく、優先順位に沿って対処できるようになるのです。
それらを初めに明確にしないで売却活動をスタートさせてしまうと、計画性に欠けたものとなり、最終的に損をしたり、後悔する取引になる可能性が高くなります。
売却理由と譲れない条件を整理することが(住み替えの方は住み替え先のことも)、後悔なく失敗しない売却活動の基本と言えます。
例えば、売却理由と優先順位が「お金」であれば、「高く売却すること」の優先度が高く、「子供の入学」であれば「通学圏内と入学までの期限」の優先度が高くなることでしょう。
売却計画を立てる上で売却理由と譲れない条件を明確にすることが、売却活動の初めの一歩となり、長い売却活動をブレずに乗り切るための重要なポイントと言えるでしょう。
家の売却の流れ
売却する理由と譲れない条件が決まったら、売却の流れを把握しましょう。
【ステップ1】家の売却価格の相場を調べる
まず売却すると決めたら、不動産業者に依頼する前に自身の物件と似ている条件の物件で価格の相場を調べてみましょう。
【ステップ2】信頼できる不動産会社を探す
納得をして家を売るために重要なのが、優良な不動産会社との出会いです。複数の不動産会社と会って、希望通りの売却を実現してくれそうな信頼のできる不動産会社を探しましょう。
【ステップ3】不動産会社と契約方法を決める
不動産会社が決まり正式に依頼することになれば媒介契約を結びます。主な媒介契約は3つありますが自身の売却計画に適した契約を選んでください。
【ステップ4】不動産会社の販売活動開始
売り出す価格の設定は自身の希望価格を押し通すだけではなく、周辺の類似した条件の物件の相場や不動産会社の査定額などを総合的に判断して慎重に決めましょう。
【ステップ5】内覧の対応
物件を気に入った方から内覧の依頼が来たら、直接、物件を見てもらい良い印象を持ってもらうチャンスです。売却に繋げるためにも隅々まで気を配り気持ちの良い内覧を提供することが大切です。
【ステップ6】購入希望者と交渉する
購入者が現れたら、売買交渉に入ります。金額に関してはもちろんですがその他の条件に関してもお互いに納得いくまで話すことが重要です。話がこじれたら、ときには両者歩み寄って着地点を模索することも必要です。
物件のマイナス情報があれば詳しく開示する必要があります。不具合や欠陥がある場合は、この段階できちんと伝えておくことで契約締結後のトラブルを回避できます。
【ステップ7】売買契約を結ぶ
売買条件がお互い納得のいく形で合意したら買主と売買契約を結びます。契約条件は内容をしっかり確認し、漏れのないように注意しましょう。
【ステップ8】不動産を引き渡す
契約完了後、売買代金を受領するのと同時に登記申請を行います。引き渡した後の税務申告などの漏れには注意しましょう。
おおよそ、3日~30日後に現金化が可能です。
【ステップ1】家の売却価格の相場を調べる
まず、最初にすべきは不動産の売却価格の相場を知ることです。
不動産会社に問い合わせる前に、まずは自分の家がどの程度の金額で売れるのか、大体の相場をインターネットサイトなどで、あらかじめ確認しておくことが大切です。
初めての売却でいきなり不動産会社に査定を依頼して売却価格を提示されたとしても、その金額が妥当であるかどうか素人には判断が難しいでしょう。
不動産会社に査定依頼する前に、近隣地域で自分の家とよく似た条件(路線価などの土地の価格、広さ、間取り、築年数)の物件の過去の売買情報を調べれば、自分の家の売却価格の目安を知ることが出来ます。
「自分の家ならこれくらいの値段で売れるかも」というおおよその目安がわかれば、不動産会社からの提示額が適切であるかどうかも判断出来ます。
周辺の不動産価格を知るための手段としては、
①不動産取引情報提供サイト「REINS」
➁国土交通省「土地総合情報システム」
➂不動産一括査定サイト
等を利用する方法があります。
①不動産取引情報提供サイト「REINS」
不動産会社が成約事例を調べる際に利用するサイトです。
REINS自体は不動産会社しか閲覧できないので、一般の方もREINSと近しい情報を確認することができる「REINS Market Information」というサイトの利用をお勧めします
➁国土交通省「土地総合情報システム」
国土交通省が公開している不動産の取引価格・地価公示・都道府県地価調査の価格が検索できるサイトです。
➂不動産一括査定サイト
不動産一括査定サイトとは、物件情報の入力だけで一度に複数の不動産会社の査定価格が分かるサービスです。
多くの不動産会社に査定を依頼してみると分かりますが、同じ物件を査定にかけても提示価格にバラつきがあります。
実際に、多くの不動産会社に出向いて査定を出してもらう作業は時間を使い労力を費やしますし、少ない不動産会社にしか依頼せず偏った情報のみで決めてしまうのも良くありません。
そこで不動産一括査定サイトを利用すれば、一度に多くの不動産会社の査定価格が分かり、時間の短縮と無駄な労力を省くことができるので、ぜひ利用をお勧めします。
以上のように不動産の相場を調べる方法を3つご紹介しましたが、これらを用いて可能な限り多くの査定価格や相場を把握しておきましょう。
相場がわかっていれば、後に不動産会社を選ぶ際の判断基準の1つとして、査定を依頼した不動産会社の提示額が適正かどうか見抜くことができるからです。
相場を把握できていれば、提示額が相場より低い不動産会社に依頼してしまい、「本当はもっと高く売れたはずなのに!」と後悔することもないでしょう。
【ステップ2】信頼できる不動産会社を探す
満足いく売却のためには、家を売ってくれる不動産業会社選びはとても重要です。
一口に不動産会社と言っても扱う不動産の種類は様々で、賃貸・売却・土地・増築など得意な分野は会社によってそれぞれ違うものなのです。
まず、家の売却に特化した不動産会社を探し、さらに一戸建て・マンションなど売る物件のタイプに合わせて不動産会社を選ぶことが基本です。不動産会社を探す際には得意分野も含めてホームページなどで調べたり、不動産会社に確認しておきましょう。
そして自分の目的に合った不動産会社を複数社ピックアップし、不動産会社に見積をもらいます。
比較する際には、査定価格の比較も重要ですが、その他にも広告の販売計画や担当者の営業対応、親身になって考えてくれているかなど金額以外の部分でも信頼関係を築いていける不動産会社を探す必要があります。
【ステップ3】不動産会社と契約方法を決める
不動産会社が決まれば、次は不動産会社との契約になります。買取か仲介になるわけですが、買取とは不動産会社にあなたの物件を買い取ってもらいます。理由は様々ですが、買取より圧倒的に仲介が多くなります。
①一般媒介契約
複数の不動産会社に仲介を同時に依頼でき、かつ、自分でも買い手を探せる契約
➁専任媒介契約
特定の不動産会社1社のみに仲介を任せつつ、自分でも買い手を探せる契約
➂専属専任媒介契約
自分が買い手を探すことを放棄して、不動産会社1社のみに仲介を任せる契約
不動産会社は、基本的に自社にとって有利な契約形態である「専任媒介契約」か「専属専任媒介契約」を勧めてくることが多いです。
がしかし言われるがままに契約を結ぶのではなく、売却時期・売却希望価格等をはじめとした様々な希望条件を明確に不動産会社に伝え、十分に話し合ったうえでベストな契約方法を選んでください。
【ステップ4】不動産会社の販売活動開始
媒介契約を結んだ後は、不動産会社が販売活動を開始します。
担当の営業マンが下記のような多様な手段を活用して営業を行います。
・不動産会社のホームページやポータルサイトへの物件の掲載
・各種住宅情報誌への掲載
・店頭での物件情報の掲示
・ポスティング、チラシ
・レインズ(不動産指定流通機構)への物件登録
など、様々な方法で広告を打っていきます。売却にとって広告宣伝活動は非常に重要です。
広告の手法や掲載する内容に関しては不動産会社とよく話し合い、売却物件にあったアプローチをしていく必要があります。
なかなか、家が売れないな?という時は広告の方法を見直すことも1つの方法です。
【ステップ5】内覧の対応
販売活動が開始すると購入希望者から内覧の依頼がきます。内覧は購入希望者に物件を直接見てもらえるので、チラシやホームページでは伝わり切らなかった情報を知ってもらったり、暮らしのイメージを持ってもらうことで購買意識をあげてもらうことができます。
そのため売却活動において内覧はチャンスの場となります。
内覧の依頼は急なタイミングで連絡が入ることも多いですがチャンスを逃さないために、掃除や換気などすべての部屋を見られても良いようにあらかじめ準備をしておいてください。
いきなりの依頼に対応が難しいこともあるかもしれません。
が、その一度の予定が合わないことで別の物件に興味を持って購入されてしまう可能性もありますので、内覧依頼は出来る限り断らない姿勢が大切です。
オープンハウスなど室内を公開するイベントなどを開催する場合には、より多くの集客が見込めます。
【ステップ6】購入希望者と交渉する
売却物件を気に入った購入希望者がいれば、購入したい!という意思表示のために「購入申込書」が提出されます。
購入申込書には「購入希望価格」「代金の支払い条件」「引き渡し希望日」など、基本的な購入希望条件が記載されているので、提示された条件を確認します。
自分の納得のいく条件かどうかをしっかりと確認し内容に問題がなければ、申込書を受け取ってから1週間後が契約の目安となります。
購入希望者の条件を必ずしも全て聞き入れる必要はないですが、自分の意見を頑なに押し通しても良い結果には繋がりません。
条件に納得がいかなければ不動産会社に相談をして市場動向やアドバイスをもらい、参考にしながら条件の調整をとることが必要です。
複数の条件を合わせた交渉方法もありますので、不動産会社とよく相談をして進めていきましょう。
【ステップ7】売買契約を結ぶ
契約条件について双方が合意したら売買契約の締結に入ります。
ここで買主が住宅ローンの予備審査を通過しているのかの確認をとっておきましょう。
審査に落ちてしまうと再度新しい購入者を探すことになってしまいます。
契約は原則として自由です。法令や公序良俗に反していなければ自由であり、自己責任で締結するということです。契約に定めのない事項については、民法その他の関係法令に従い協議の上で決定することになっており不明確な契約条件は契約後のトラブルになります。
不動産契約は大きな取引であり、信頼関係の上で契約を結んでいるので一方の都合で簡単に契約の解除をすることはできません。契約内容を今一度しっかりと確認してから契約を結ぶことが重要です。
契約締結時に、売主は買主から「手付金」を支払われるのが通例です。
手付金は仮に売買契約を解除したり、双方どちらかに契約違反があった場合に、その契約解除料や罰金の支払いなどに使用されます。契約書の「手付金の返還の条件」の部分についても内容を確認しておく必要があります。
売買契約を結んだらローンの本審査に入ります。
売却物件にローンが残債として残っている場合には抵当権抹消などの対応もこのタイミングで必要となります。
【ステップ8】不動産を引き渡す
買主のローンの本審査が通過し売却が確定すると、売却物件に住んでいる場合には新居への引っ越しとなります。引っ越しを済ませば、あとは物件引き渡し日を待つのみです。
物件引き渡し当日は、おおそよ1時間半~2時間程度の時間がかかり買主はローンを借りる銀行でローン決済や、登記委託や仲介手数料の手続きをします。
全ての清算後、売買契約ではマンションの詳細を説明した重要事項説明書、契約条件をまとめた売買契約書、付帯設備表と物件情報報告書を読み合わせ、署名・捺印を行い、家の鍵を引き渡し晴れて家の売却が完了となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?不動産の売却には以上のような流れがあり、その期間は大体3ヶ月~6ヶ月といわれいます。
基本的に不動産会社との契約期間は3ヶ月で一旦終了するので、その期間内に購入者が見つかると想定しておくと良いでしょうが条件の良い物件であれば売り出し後すぐに売れることも珍しくはありません。逆を言うとなかなか買い手の見つからないケースもあります。
そのようにならないためにも、まずは全体の流れをきちんと把握してから行動に移すことで漏れが起こらず失敗のない売却活動を進めることが出来ます。
より良い条件でスムーズに売買契約を交わす為にも基本の手順と流れをここでしっかり確認しておきましょう。